硝子の花片
「池田屋での事、覚えてますか…?私を助けてくれた時のこと…」


桜夜さんがはっとした顔をした。

「まさか…土方さん…!」

悲鳴のような声を上げて顔を真っ赤にした彼女。直ぐに視線を逸らされた。

(本当なんだ…)

そう思わせるに足りる反応だ。


「ええええっと、あのっ、そっそれは…!」

「…貴女は私のはじめても奪ったのですね。
やはり面白い人だ。…でも、貴女にばかりそんなこと、させられませんよね?」

(あれ。これ、私…?)

自分でもよく分からない衝動に駆られていた。



私は耳まで真っ赤な桜夜さんの頬に手を伸ばした。


私はその頬にそっと口付けた。



「おおお沖田さんっ!?」

「…ちょっ、今こっち見ないで…」

私は直ぐに顔を背けた。さらに袖で顔を隠す。

絶対顔が真っ赤になってる。秋なのにすっごく熱い。

今桜夜さんの顔を見てしまえばどうにかなってしまいそうだった。



二年半。狂ったように探し回った、愛しい人。

もう、離れたくない。離したくない。





自分の大切な人は、自分で、この手で守らなきゃいけない。

そう改めて思った二年半前のあの日。





でも。

私は彼女を離さなくちゃいけないかもしれない。

彼女が生きるために、彼女の未来を守るために。



でも、今は一緒にいたい。

…我儘だね。
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