硝子の花片
「あれ、久しぶりやなあ。桜夜さん。」

食堂に行くと粥を作っていた山崎烝に会った。

山崎烝は監察方という部署の人で、今は副長助勤にまでなっている。そして新撰組の医務を務める。

総司とよく話す人なので知っている。

「山崎さんですよね?お久しぶりです。それ、おき…違う。総司の粥ですか?」

「ああ、うん。そう。最近ほんとに食欲なさそうで心配やったから。ついでに葱沢山入れてやろと思って。」

そう言って粥にどばあっと葱を突っ込む山崎さん。


確か近藤さんと同い年くらいだと思うのだが見た目同様、中身も若いようだ。


総司が葱が苦手なのを知っていながら悪戯しようとしている。

(確かに葱は風邪に良いと言うけども…)

私は苦笑いしか出来なかった。


「…まあ、でも桜夜さんが戻ってきてくれてよかった。総司の看病役が増えるし、総司も食べもん食べるって直々に言ってくれるし」

「えっ?」

そう言って山崎さんは粥をお盆に乗っけて苦笑した。

「あいつなぁ、桜夜さんが居ない時は本当に元気なくてなあ。食べもん受け付けんかったんだよな。食べても1口2口くらいだし…」

(…そうだったんだ。)

私の心臓は冷水に付けられたように痛かった。

「まあ、この件は桜夜さんのせいでないし、気にせんでな。あんたが悲しい顔すると、総司まで悲しい顔するから。それに、総司は…」

そこまで言って山崎さんは言葉を濁した。

「…総司が、どうかしたんですか」

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