硝子の花片
友を失わずに済むかもしれない安心感とは反対に、胸がチクッと痛んだ。

(私は、戦えない。役に立ちたくても、立てない。)

少し前まで前線に立っていたのに、今は足でまといでしかない。



(もし、屯所が襲われたとしても、私は、桜夜さんを…
守れない…。)


私は自分の拳を握りしめた。

前よりも力の入らない拳にも嫌になってくる。

「…総司…」

「…っあ!ご、ごめんなさい。話聞いてませんでした…」

「あ、いや、もう話は終わりだったんだが…調子が悪いのか?」

土方さんが心配そうに眉を下げる。


ただでさえ忙しいのに、余計な事、考えて欲しくない。

「いえ?ただ話終わらないかなーって」


私は笑顔を作り、言った。こんなの、誤魔化してるだけだ。

土方さんと斎藤さんは一瞬悲しげに顔を歪めたが、苦笑した。


土方さんは組長達に解散を命じ、部屋には私と斎藤さんと土方さんだけが残った。


「…本当に大丈夫か?総司」

土方さんは低く尋ねる。

「大丈夫に、決まってるじゃないですか。」

「ちげーよ。…体調じゃなくて……悔しいんだろ」


(悔しい…?)
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