硝子の花片
そうなのかもしれない。

剣の道に生きている私が、剣をもてない、誰かの役に立てない、そんな無力な自分が嫌になる。

「ふふっ…そうかもしれませんね。私には、剣を持つ以外無いのに…」

「ふざけるな!!目を覚ませ総司!!」

急に背後から大きな、でも聞くと心が温まる声が聞こえてきた。

振り返ると、いつの間にか近藤さんが立っていた。

「お前に教えたのは剣術だけじゃない。…生きることだ!!それにお前には桜夜がいる、桜夜の為にも生きなきゃなんねぇ立場にある!」

「生きる…こと…?」


私は今まで剣を取り、戦いの中に身を置き、近藤さんの為に死ぬ事しか考えてなかった。

…違うんだ。近藤さんが私にくれた事は、そんな死にたがりな気持ちじゃなくて。


「それにお前が死んだら、俺はどうすればいいんだ…兄弟みたいだった山南も、弟みたいな総司も、どっちも失うなんて耐えられない。」

近藤さんは悲しそうに顔を歪めた。
近藤さんのそんな顔見たくなくて。
近藤さんには笑顔が似合うから、笑って欲しくて。

近藤さんの為なら死んでもいいって思っていたけど、それは近藤さんを傷つけてしまうんだって気づいた。

…桜夜さんも、傷つけてしまう。
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