硝子の花片
もっと、別の守り方がある。

剣を握ること以外に。

それは、生きること。


(…私は、それを知っていたはずだ。)

冷たくなった体を、泣いて抱きしめる人。

そんな光景を見て見ぬふりして。

人を斬ったり、傷つけるうちに、生きることを諦めてた。


死んでしまったら、悲しむ人がいる。

死んでしまったら、心に傷を負う人がいる。


そんな人が少なくなるように、私は生きなきゃならない。



(…何が何でも勝手に死んだりしない)

そう誓った私は、近藤さん達の暖かい視線を背に受けて部屋へ戻った。

冬の廊下は寒いけれど今はそこまで寒くない。

生きる目的が、出来たから。



脳裏に彼女の笑顔が浮かぶ。

何だか体温が上がった気がした。

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