硝子の花片
屯所の門を潜り抜け、闇夜の道を歩いていく。

総司の背中が消えないように、全速力で追った。



闇は濃くなっていくのに騒がしさは増した。

(戦ってる…?)

ふと、追っていた背中が動きを止めた。

何があるのか闇に隠れて見えない。
数年前より弱々しく感じる背中しか見えなかったが、その背中がさらに弱々しくなっていくのを感じた。


私は息を切らしつつ総司の隣に並んだ。


総司は何も言わない。

ただただ、闇の奥に視線を向けている。

その横顔からは感情というものが感じられない。




心臓が冷水に浸されるような心地がした。


闇に目が慣れて視界がはっきりしてくる。








見えたのは

闇と、紅。

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