君が眠る時には

「こちら上原そうだ…」


「たすけて!!!!」


彼の言葉を遮って叫んだ。


「えっと…」


「ちょっと前に!会ったでしょ?
無理やり名刺渡してきたでしょ!?」


そう言うと、思い出したようだった。


「あ!えっと、どうされました!?」


「たすけて…おねがい」


あの人が怖すぎて、出てくれたことに安心しすぎて、それしか言えなかった。


「どこにいるの!?」


向こう側で声色が変わったのが分かった。


「……駅前からちょっと外れたとこ。
男の人に追いかけられて…」


半泣きでそう答えた。


「とりあえず道を曲がりまくって、その人から逃げて。危ないからなるべく人のいる方にね」

「うん…」


上原さんは私のところに来るまで、電話を切らないでいてくれた。


地面を蹴る音と荒い息の音だけが聞こえてくるだけなのに、私はとても安心していた。
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