君が眠る時には

どーせ無理なんだ。


分かってる。


分かってるから、私は今の生活を辞めない。


どんな危ない目に会おうと辞められない。


これでいいんだ。


遥さんとはもう会わないだろう。


憧れなんて忘れる。


私は私なりに、けがれた人はけがれた人なりに、自分の道をいきるんだ。


一人きりの家に戻ってそう思った。


でも今日は少しだけ、いい夢を見てみたい。







その後も、危険と隣り合わせの私の生活は変わらなかった。


遥さんのことも忘れかけていたある日の朝、起きたらメールが届いていた。


"雪ちゃんの話をしたら、1度会ってみたいって言ってる人がいるんだ。
気が乗らないなら無視でいい。
でも、もし良かったら12時に駅に来てもらってもいい?"


私に会ってみたい人?そんな人いるの?


いたとしたらだいぶ物好きだ。


行くのめんどくさいな…。


今日は家から出ない予定だったし。


"今日はちょっと"


なんとなくだるくて、私はそう返信した。


"用事あるの?"


すぐに返ってきた。


諦めると思ったのに。


無視していいとか言っておきながら、来させる気まんまんじゃん。


"ないですけど"


"じゃあ、この前助けたお礼だと思ってさ"


……そう言われると行かないわけにはいかないじゃん。


"まぁ、会ってみるだけなら"


いつもよりちょっと落ち着いた服装に着替えて家を出た。
< 17 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop