君が眠る時には
生きる術
「ねぇ、君いくつ?」
後ろから声をかけてきたのは、30代くらいの小太りなおじさん。
普通の女の子なら、おじさんなんて見向きもせずにここで逃げるんだろう。
でも私は違う。
「17」
嫌な気はしない。むしろラッキー。
おじさんはにやにやしながら財布を取り出した。
「いくら?」
「2万」
「先払いでいい?じゃあいこっか」
おじさんは私がお金をカバンに入れるのを確認してからタクシーを呼んだ。
私、片倉雪(かたくら ゆき)
私の母は、苦しい家計を助けるために援助交際をしていた。
父の稼ぎだけだと足りないけど、身体が弱く体調を崩しがちな母は働きに出ることはできなかった。
私だけには不自由させまいと始めたらしい。
私はなんとなくそんな事を知ってはいたけど、父には教えなかった。
でもいつの間にかバレて両親は離婚。
仕方ないよね。
どちらかと言えば母について行きたかったけど、それは母の負担になると思い言えなかった。
引き取ってくれた父も、女を追いかけていつのまにか家を出ていった。
狭くてボロいアパートで実質一人暮らし。