君が眠る時には
でもちがった。
病院には患者さんもいる。
しかもプレートには"上原葵(うえはら あおい) 様"と書いてある。
上原って…。
私は遥さんを見上げた。
「ここは、僕の弟がいる部屋なんだ」
その横顔はなんだか悲しそうだった。
弟さん?
おじいさんとかならまだ分かるけど、弟さんなんだ。
何かの病気ってこと?
てか、私に会わせたい人って弟さん?
頭に浮かぶのはハテナばかり。
何がなんだかわからない。
「遥さん、いいかげん説明してくださいよ」
そう言っても
「とりあえず会ってから」
教えてくれない…。
遥さんは病室の扉を開けた。
そこで私が見たのは、とても綺麗な男の人だった。
白くて、細くて、私が今まで目にしてきた中で1番と言えるほど綺麗だった。
「遥、やっときた」
静かな病室に響いた低い声。
これが、葵との出会いだった。