君が眠る時には

マンガや小説の中だったら、親がお金だけは置いて行ってくれるんだろうな……。


現実はそんなに甘くない。


うちは貧しいし、そもそも父も母も私のことをそれほど愛していない。


自分で何もかもやらなければ、待っているのは「死」だけ。


家賃、食費、光熱費、スマホ代、その他諸々。


高校生のバイトの収入だけで、全てを支払えるわけがない。


考え抜いた末、始めたのがこれ。


母と同じ道。


血は争えない。仕方ないんだ。


たとえ犯罪だったとしても、それが私の生き抜くすべ。


そうやって言い訳して、自分の行為を正当化しながら、生きていくしかないんだ。


遊んでキスしてセックスして。


それさえすれば、たとえ気持ちがつながっていなくても、私は幸せなんだと思い込めた。


私は愛されている。それなのにお金をもらえる。


幸せだよ。


これが私の、幸せなんだ。






ホテルから出た後、財布の中身をもう一度見た。


今月はこれくらいあれば、生きていけそう。


家までの道のりを一人で歩いた。


街灯もないし車も通っていない。


寂しいなんて……思わない。

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