君が眠る時には
決意
次の日、私は葵に会いにいかなかった。
スマホにはなぜか遥さんからの着信とメッセージがきた。
無視しよ。
別に不思議な事じゃない。
出会ったばかりの人にあんなに感情的になるなんて、私はどうかしていたんだ。
前の生活に戻ろう。
そう思って町に繰り出した。
それなのに今日は誰からも声をかけてもらえない。
やけになって、初めて自分から声をかけに行った。
中年で小太りで指輪をしてない人。
あ、あの人でいいや。
「あのー、お兄さん」
「はい」
「今暇ですか?」
「暇だけど、どうしたの?」
あー、鈍い人か。
「ちょっと遊びに行きませんかぁ〜?」
この時間に私服でここにいるってことは、どうせ暇でしょ。
一瞬お金を持ってるか心配になったけど、パーカーのポケットからは少し古そうな財布が見えた。
「いいよ」
少しの沈黙の後、理解したかのようにそう答えてくれた。