君が眠る時には
気がつけば、走って病室をあとにしていた。
何もできないくせに
その言葉が私の頭を支配する。
私、何もできないんだ。
いらない子になったんだ。
また誰にも必要とされなくなるの?
みんなから嫌われて、誰にも助けてもらえなくて、辛くて……辛くて…。
援交に手を出した時のことが蘇ってくる。
一番大切な人にあんなこと言われて、私はどうすればいいの?
この気持ちの行き場なんてなくて、打ち明けられる誰かもいなくて、私は仕方なく1人で家に帰った。
こんな時、誰もそばにいてくれないのが辛い。
理解してくれなくていい。
慰めてくれなくていい。
ただ、そばにいてほしかった。
そう、私はわかっていたはず。
辛い時に大切な人がそばにいてくれないことが、辛いことを。
身をもって知っていたはずなのに…。
強がりな葵の精一杯の嘘に、気づけなかった。