借金取りに捕らわれて〈番外編〉~日常~
「お前、趣味悪いぞ。」


「真吾の事が心配だったんだよ。」


裕貴は持っていたカップをソーサーにそっと置いた。


「心配?なんのだよ。」


「お前な~あれは絶対騙されてるぞ。」


「何言ってんだよ。そんなわけねーだろ。」


あんなに優しい彼女がそんなことするわけがない。


「お前、女見る目"だけ"はないからな。」



深い、それは深い溜め息を吐き、今度は哀れみの目を向けてくる。



「いやいや、何を根拠に言ってんだよ。」


「………」


暫く口をつぐんだ裕貴が徐に口を開いた。


「……実は俺さ…」


「?」


「いや、何でもない。」


「何だよ!」


そこまで言ったんだったら最後まで言えよ!
気になるだろ!


「それより、お前がマグロ漁に行ってた間の偽装工作代。」



ぐっ…それを言われたら、これ以上聞けないだろ…

マグロ漁に行っている間、裕貴にスマホを預け俺のふりをして母さんに連絡をしてもらっていたのだが…

偽装工作を完璧にやり抜いたあかつきには、何かお礼をすると約束していたのだ。



「金はないからな。」


「分かってるよ。マグロ漁まで行ってんの知ってんだから。」


「じゃあ何が望みなんだ?」


「お前の母さんに会いたい。」


俺の母さんに!?マジ予想外なんだけど…


「えっ…お前、俺の事…」


「変に考えんなよな。会うのは俺の兄さん。」


確か、裕貴の兄貴って大手の会社に勤めてたよな?


「まぁ、良いけどさ。そんなんで良いの?」


「そんなんで良いんだよ。」


「頼んでみるけど、母さん忙しいから期待はするなよ。」


「承知の上だ。」


俺はその場で母さんに連絡をいれた。
そして後日、了承の返事が来るのだった。




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