借金取りに捕らわれて〈番外編〉~日常~
もうこれは腹をくくろう…


「で、では、頂きます…」


ごくりと喉をならし、グラスを口に近づける。


好きなお酒なのに、まるで毒を飲もうとしているかのような面持ちだ。

グラスに口をつけ、一つ毒を…否、お酒を含み喉を通せば、度数の高い液体が体の奥へ落ちていくのが分かった。




くっ…お、美味しい…





香りも強ければ、味もしっかりしている。

なのに、直ぐに二口目を飲みたくなる…

こんな状況じゃなければ…と悔やまれるほどの美味しさだ。


「この芋焼酎、なんて言う名前のやつですか?」


秋庭さんは瓶をくるりと回し、私の方からは影になって見えなかったラベルを見せてくれた。


「冥土の旅路ってやつ。」


「!?」



こ、これは!

元々製造数が少なく手に入りにくい芋焼酎ナンバーワンにして、その入手困難さから高値で売買される高級酒!

このグラス一杯で、諭吉2、3人分くらいかな…



「こんな高級酒どうしたんですか?」


「実家から、お裾分けで送ってきたんだよ。」


お裾分け…
こんな高級酒を?
秋庭さんのご実家っていったい…

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