はちみつドロップス
一瞬。
驚いたようにギョッとした皇楽に涼希の笑顔は変わらない。



「……なんで俺に言うんだよ。関係ねぇし」


「ふーん。……じゃ、遠慮無くいかせてもらいますね」



何でも無いようないつもの仏頂面で答えた皇楽に涼希は相変わらずに笑顔を湛えている。



爽やかに、でもどこか挑発的な言葉を残し涼希は更衣室の中へと入っていった。



「……だから言ったじゃん。そのうち誰かに取られるって」



傍らから終始やりとりを見守っていた慶斗が皇楽に小さく呟く。



まさか忠告がこんなにも早く実現するとは思ってなかったけど……これはこれで面白い。



自分が発破をかける手間が省けたことを喜びつつ、



「わざわざバイトにまで入ってきてさ。結構本気なんじゃない? アイツ」


さっきから一切変わらない皇楽の表情が慶斗を軽く苛つかせた。



そのまま皇楽が何も言わずに立ち去ろうとするより早く、



「高原ーっ。店長が呼んでる」



カウンターから水を飲み終えて出て来た天が声をかけた。



水を飲んで落ち着いたせいか、何事も無かったように自分を呼ぶ天に皇楽の眉間に深いシワが浮かび上がる。

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