はちみつドロップス
数秒間。
イライラしながら天をじっと見つめた後、
「……バカ女っ」
「痛ッ! 何すんのっ!」
正面に立つ天の額を目掛けて皇楽が勢い良く指を弾いた。
激痛の走る額を押さえて喚く天を放置して、皇楽はさっさとカウンターに入っていってしまった。
「何なのアイツ……」
去っていく背中を恨めしげに見つめながらブツクサと文句をたれる天に、
「愛情表現だろ。皇楽流の」
にっこりと爽やかに笑いながら慶斗がサラリと答えてみせる。
もちろんそんな答えに納得するはずもなく、天は訝しそうに顔をしかめた。
「んなワケないでしょ。アレが愛情表現だったら絵那のこともバンバン叩いてるよ」
ごくごく冷静な顔をして慶斗に言い残し、天はさっさと持ち場に行ってしまった。
「ホント鈍いな。……鬱陶しいくらい」
いくらけしかけようが一向に素直になる様子の無い二人に、慶斗は一人大きな溜め息をついた。