はちみつドロップス
「月先生、さようならぁ」
お迎えを待つ園児で賑わう園庭でやたらに違和感を醸し出す長身の制服姿。
足元で丁寧に頭を下げてお辞儀をする弟の傍らに佇む姿は慣れたもので。
週末恒例のお昼寝用お布団の持ち帰りに臆することなく、平然とした表情でキャラクターがプリントされた子どもサイズの布団を小脇に抱えている。
「さようならー朗楽くん」
笑顔で挨拶を返す月先生にペコリと頭を下げ、空いた方の手で朗楽の手を皇楽が握った。
そのまま手を引きながら颯爽と保育園の門を抜ける姿は、お迎えのお母様方の目の保養と言わんばかりに注目を集めている。
まさか自分たちにそんな熱い眼差しが向けられてるとも知らず、
「……今日、給食何だった?」
「えーっと……唐揚げ。あと牛乳」
「牛乳はメニューじゃないだろ……」
「皇にぃ夜ご飯は?」
「焼きそばと……豚汁。あとサラダな」
他愛ない会話と共に今日の高原家の晩御飯のメニューが決まっていく。
買い物に行くべくお布団と荷物を一旦置きに家に向かう二人が、ちょうど保育園の門を抜けた時だった。