はちみつドロップス
「とにかくさぁ、よろしく頼むよっ。天ちゃんも真剣なんだよぉ。ねぇ?」
真剣と言われるとそこまで強く反対しにくい。
かと言って賛成してるワケじゃないのは勿論。
強制で秘密を共有するはめになったのはウザいけど。
面倒にさえ巻き込まれなければ、二人が断固反対する理由は特に無い。
「まぁ、いいッスけど……」
「あの巨女が俺と関わらないなら……」
「おーい天ちゃん! 皇楽と慶斗が面倒見てくれるってー!」
二人の言葉を都合良く脳内変換した店長は、嬉しそうに甲高い声を上げながら飛び出して行ってしまった。
思わず皇楽と慶斗が無言で顔を見合わせる。
「バラしてやろうか……」
何が悲しくてバイトの時間までコイツの相手をしなきゃいけないんだ……。
反対しなかったことを皇楽はものの数秒で後悔していた。
怒りで眉間に極太のシワを寄せた皇楽に、
「バラしたら……クビだぞ?」
ひょっこりカムバックしてきた店長がウインクを飛ばし、軽い脅迫を残してまた去っていく。
皇楽の眉間はシワを通り越して眉頭がどうかなりそうなくらい筋が浮き上がっている。
「汚い大人だな。見た目も中身も。……汚物オヤジが」
こう言って爽やかに笑顔を浮かべた慶斗の目には、一切笑みらしきものが感じられなかった。