はちみつドロップス

放課後の校舎は人気が無い。


特別教室の並ぶ別館は輪をかけて静まり返っている。



「ちょっとっ! 高原っ! 高原ってば!!」



マニアックな科学部もTHE 乙女代表な家庭部も今日はお休み。



ただただ引っ張られるままに連れられてきた天は、さっきからひたすら見慣れた背中に呼びかけた。



「…………」



奥から二番目の理科室に差し掛かった所で皇楽が足を止めて天に振り返る。



「……どうしたの? まさか呼び出し? タイマン?」



天の手を握ったまま真剣な眼差しで自分を見つめてくる皇楽に天がおどけたように笑って見せた。



「……高原?」



いつものような皮肉を返すでもなく、さっきからただこちらを見つめる皇楽に不思議そうに首を捻る。



「……何なんだよ、おまえ」


「へっ? 何って……」



握った手のひらにジワジワと力が込められていく。



ただならぬこの雰囲気にさすがの天の表情にも段々と緊張感が滲んでいく。

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