はちみつドロップス
紺色のセーター越しに感じる鼓動は自分のものと変わらないぐらいに早いスピードで脈打っていた。
「おまえ……まだ俺のこと」
「……好きだよっ」
「えっ?」
小さく囁いた天の声をきょとんとした顔で皇楽がのぞき込む。
近付いた皇楽の顔に上目に見上げていた天が腕を伸ばして身を寄せた。
「好きに決まってるよっ! ずっと高原のこと見てたっ」
皇楽の首元に回した腕で天の顔がぐっと近付く。
柔らかな癖毛から香る甘い匂い。
皇楽の胸が一気に高鳴り始める。
「…………」
ぼんやりと見つめる目の前の天はじっと自分を見据えていて、
「……何か言ってよ」
「えっ……。あっ……うん」
「…………」
そんな天が予想外だったのか。
何とも歯切れの悪い返事を返すことしか出来ない。
「……じゃあもういいっ」
とうとう痺れを切らしたのか。
こう言って唇を尖らせた天が皇楽から身を離してしまった。