はちみつドロップス

ぺったんこのヒールが付いたミュールを足につっかけ、玄関のノブに手を掛ける。



「どこに行くの?」



それを丁寧に見送る姉はギリギリまで質問攻め。

ただのミーハーだ。



「水族館だよ」


「……お弁当とか作らないワケ?」



小さな手提げカバンひとつを持った天に月は不思議そうに手元を見つめる。



初デートに水族館と言えば手作りのお弁当で女の子らしさをアピールするには持ってこいのシチュエーションだ。



「お弁当? それなら皇楽が作ってくれるからっ。いってきまーす」



満面の笑みで手を振り、玄関から駆け出した妹を複雑な心境で月は見送る。



初デートにお弁当を作ってくれる彼氏。

初デートに彼氏の作ってくれたお弁当を食べる彼女。



「……そんなのも有りかな」



天が出て行った玄関でボサボサの頭を掻きながら一人呟いて納得。



「まぁ、さすがに朗楽くん連れてきたりはしないだろうしね」


こう言って笑いながら二度寝する為にベッドに戻っていくのだった。

< 135 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop