はちみつドロップス
水槽に合わせていた視線を皇楽に合わせた天がへらっと笑いながら謝る。
「あーごめんごめん。はいっ」
「……はっ?」
こう言って笑顔で差し出された手に皇楽は不可解そうに首を傾げる。
反対の手には勿論、しっかりと朗楽の手が握られているワケで……。
「……弁当はまだ早いだろ」
「違うよっ。手だってば」
察しの悪い皇楽に焦れた天が手を伸ばし、空いた方の手を握り締める。
「ちゃんと繋いどかないと迷子になっちゃうもんねぇ。皇楽が」
「迷子候補はおまえだろがっ」
こう言いながら笑顔を向ける天に、手を振り払った皇楽は苛立ちながら軽く頭を叩いた。
初デートだというのに違うのは可愛く着飾った外見ばかりで、中身はまるでいつもと変わらない天に何となくイラついてしまう。
そんな皇楽の心情など知る由も無く、天はただただ楽しそうに朗楽と水槽を見渡している。
その傍らに居る朗楽もいつになくはしゃいでいた。
「…………」
そんな二人の背中を一人難しい顔をした皇楽が黙って見つめていた。