はちみつドロップス
嵐の前の静けさ
初デートも成功に終わり、ぐっと縮まった距離も学校では相変わらずのいつも通りだった。
「おまえは……人の机に涎付けんなっ!」
「痛ッ! だからいちいち叩かないでってば」
六限目の授業も勿論、睡眠学習に費やした天に机を占領された皇楽の怒りの鉄拳が飛ぶ。
「ほらほら皇楽。好きな娘をイジメないっ」
「天もだよ。好きな人の前では涎拭かなきゃ」
告白の時にした約束通り、付き合い始めたことを公表してない二人への周りの対応も当然相変わらずで。
「好きじゃねぇよっ」
売り言葉に買い言葉で皇楽はいつもの如く否定する。
それに反して、
「わ、わたしだって……」
嘘が下手くそな天の反撃はどことなく歯切れが悪いの……。
一瞬。
目があった慶斗に笑って誤魔化すも、何となく慶斗の目は完全に笑っていない。
「絵那ぁ。わたし今日のノート写してから帰るから先に帰ってて。ごめんっ」
寝起きの体をぐっと伸ばし、のそのそと筆記具を取り出しながら天が絵那に謝る。
その隣では何も言わずに皇楽が日直日誌を書き始めていた。