はちみつドロップス
「だったら手伝っ……」
「じゃあ皇楽。俺も先に帰るから」
肩に掛けていたカバンを下ろし、天の前の席に座ろうとした絵那の腕を素早く慶斗が掴む。
絵那が驚いた顔で慶斗を見れば、机に座る二人に目配せしてからニコッと作り笑いを浮かべた。
「はいはい。行くよっ、花井さん」
「えっ? あ、うん」
「お、おいっ。慶斗っ」
こう言って絵那の背中を押しながら教室の出口に向かう慶斗に、皇楽が驚いたように声を掛ける。
そんな皇楽に振り返った慶斗は、
「……で? 何時まで黙ってんのかなキミたちは?」
「はっ?」
不敵に笑ってボソッと皇楽の耳元で小さく囁いた。
怪訝そうに眉をしかめた皇楽をニヤニヤと見つめたかと思えば、
「じゃあなっ。皇楽、高宮」
次の瞬間には、それはいつも通りの爽やかな笑顔へと変わっていた。
「…………」
「珍しいねー。あの二人が一緒に帰るなんて」
呑気に手を振る天に皇楽は何故か険しい表情とこちらを向いた。
「あれっ? どうかした?」
「……日誌出してくる」
もしかして……バレているのか?
なんて悪い予感が慶斗の残した不適な笑みと共に離れない。
もやっとする頭を振り切るように皇楽は足早に職員室を目指した。