はちみつドロップス

三十分後。



「ほらっ」


「わぁっ! ありがとうございます」



何故か家庭科室に居るのはチョコレートケーキとホイップを持った皇楽だった。



その向かいでは、さっき泣きすがってきた彼女が嬉しそうに手を叩いている。



「メレンゲが出来ないくらいで泣くなっ」


「ごめんなさい……」



こう言って上目に皇楽を見上げる彼女、椎菜(しいな)は申し訳無さそうに目を潤ませて口元に手を当てた。



椎菜は好きな先輩の為にチョコレートケーキを作っていたものの。
メレンゲが上手く作れず通りすがりの皇楽に泣きすがったのだった。



「……さっさと持って行け」


「はいっ。ありがとうございますっ」



教室でラッピングをするという椎菜に皇楽がそっと焼きたてのケーキを差し出す。



それを受け取り嬉しそうに笑う椎菜に、



「がんばれよっ」



優しく笑いかける皇楽は、まるでかつての自分好みの女の子に対応するときのように見えるのは気のせいだろうか……。



皇楽は弾むような足取りで家庭科室を飛び出した椎菜を見送った。



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