はちみつドロップス
「……がんばれよっ、だって。優しいなぁ」
「っ!? ……何やってんだよっ」
不意に聞こえた背後からの声に皇楽は慌ててそちらを振り返る。
そこにあったのは無表情で皇楽をじっと見つめながら床に座り込み、余ったホイップを食べる天の姿だった。
目を見張ったのも束の間。
しゃがんで天に視線を合わせた皇楽は、呆れた表情でホイップを口に運ぶ天の手を止めさせた。
「何時から居たんだよっ」
「十分前くらい……」
十分前から家庭科室の教卓に隠れて居た天。
椎菜が出て行ったのを見計らって、皇楽の後ろに回り込んだらしい……。
「覗き見なんかすんなっ」
事情を聞いた皇楽は溜め息を吐き、天の額に軽くデコピンを食らわす。
「だって!……遅いから探しに来たら女の子と二人でケーキ作ってるからさ」
弾かれた額を軽くさすりながらポツポツと唇を尖らせて呟く天は不満げに皇楽から目を逸らす。
それにもう一度だけ小さく溜め息を吐いた皇楽が頭を何度か掻いた。
そして、
「っん」
「……悪い。待たせて」
ホイップの残る甘い唇に軽くキスをした。