はちみつドロップス
究極のライバル
目の前で彼氏が他の女の子に告白される、という何とも言えない状況と心境にある。
椎菜が立ち去った後の家庭科室で皇楽は恐る恐る後ろを振り向いた。
それとほぼ同時に立ち上がった天とバッチリ視線が重なる。
「…………」
「…………」
無言のまま見つめ合う二人の間に重苦しい空気が流れていく。
「……今の娘、皇楽のタイプでしょ?」
「はぁっ?」
重苦しい空気を破ったのは天の方だった。
沈黙を破った天の一言があまりにもショックで……皇楽は思わず眉間にいつもの如くシワを寄せていた。
「小っちゃくて女の子らしくて……」
すっかりいじけてしまっている天はブツブツと文句を垂れながら出口の方へと足を向けている。
「……バカ」
皇楽とのすれ違い際。
いつもより何倍もの優しさが込められた“バカ”と共に左手が掴まれる。
「俺にはおまえが居るだろ。関係ねぇよっ」
「……うぅ」
こう言って空いた左手で天の柔らかいハニーブラウンをグシャグシャと撫でつける。
顔を上げた天に飛び込んできた皇楽の微笑みが、胸の中のくさくさとした気持ちを取っ払っていく。
「帰んぞっ天」
「うんっ」
呼ばれた名前に天がにっこりと笑い返し、二人は並んで家庭科室を後にした。