はちみつドロップス
「だいたい。周りに秘密って……普通に有り得ないじゃん?」
「えっ……?」
椎菜の甲高い声は低いトーンに変わり、紙袋を抱き締める両手は気づけば腕組みに変わっていた。
呆然と立つ尽くす天の向かいで、
「だって仮にも彼女だよ? 男なら自分のモノってアピって取られないようにするでしょ。それなのに……」
スラスラと饒舌に毒を吐いていく椎菜がまるで哀れんだように嫌味に笑ってみせる。
言い知れぬ不安が頭をよぎり天の表情がみるみるうちに曇り始める。
「高原先輩……高宮先輩が彼女なのホントは恥ずかしいんじゃない?」
「っ!?」
核心をつく一言で天の頭は真っ白になっていく。
そうじゃないと否定する言葉が一言も出ない。
自分の中でもずっと気になっていたこと。
何故、皇楽が自分との関係を周りに明かさないのか……。
予鈴のチャイムと共に立ち去っていく椎菜を見つめながら天は唇をキュッと噛み締めた。