はちみつドロップス
昼休みも中盤に差し掛かった頃。
いつもの教室で賑わうメンバーから離れ、一人非常階段で佇む天が居た。
今から遡ること三十分前。
昼休みになった瞬間を見計らって、天は皇楽を廊下に呼び出していた。
「なんだよ……。さっさとしろっ」
忙しなく教室を窺う皇楽の目をじっと見つめ、天は意を決して口を開く。
「……椎菜、理科室の前で告白したの見てたんだって」
「……マジかよっ」
天の言葉を聞くなり、まずったように皇楽が顔をしかめる。
その皇楽の表情がますます天の不安を駆り立てているとも知らず。
「椎菜はさ、わたしたちが付き合ってるってわかってて皇楽に告白したんだよっ」
こう言って泣きそうに自分を見上げる天から皇楽が視線を逸らす。
その態度に更に不安を煽られた天はもどかしそうに言葉を続けた。
「わたしと喋る時の椎菜、皇楽と居る時と全然態度も違ってて……。喋り方とかもいつもと違って声とか低いしっ」
どうすれば皇楽に伝わるのか……。
必死に言葉を紡いでいくのに、皇楽の表情はどんどん渋いものになっていく。