はちみつドロップス
「……何でも無いって! ちょっと夜更かししちゃって眠いだけ」
こう言っていつものように天がヘラッと笑ってみせる。
それに一瞬涼希が目を丸くさせ、
「じゃあ、寝る? ……俺の膝枕でっ」
「もぅっ。何言ってんのっ」
軽いノリで天の肩に腕を回してみせる。
それをスルリと交わしながら涼希の腕を笑いながら叩いた。
涼希との他愛ない会話で少しずつ曇った気持ちが晴れていく。
例え秘密にされたとしても自分は皇楽の気持ちを信じよう……。
そう思い、少しだけ明るくなった心で天が教室へと戻った時だった。
「……どこ行ってたんだよ」
「皇楽っ」
教室の手前に立っていた皇楽に呼ばれて反射的に足を止めた。
「飯、食ってねぇんだろ」
結局昼休みの全てを非常階段で過ごしていた天。
ずっと空っぽだった隣の席に皇楽は少なからず関心を向けていたらしい。
それを知った天の表情がスッと明るくなっていく。
「ほらっ」
「えっ……」
そして皇楽が差し出した可愛らしい紙袋に包まれたものに絶句した。
それは紛れもなく、さっきまで椎菜の腕にあったスコーンだった。