はちみつドロップス
「教室で待ってるだけの皇楽と違って涼希は捜しに行ったからね。高宮のこと」
自分の反応を窺うようにこちらを見据える慶斗からイライラ全開の顔で視線を外した。
「高宮は……教室で心配されるより捜しに来て欲しかったんじゃない?」
「……関係ないし」
やっぱり折れない皇楽は慶斗の予想の範疇。
だからこそ慶斗の舌にもますます毒が含まれるってもの……。
「そこに追い討ちをかけて椎菜のスコーン渡されたら……」
そりゃ高宮じゃなくても無視したくなるって。
付け加えて去っていく慶斗に返す言葉も見つからない。
一人残された教室で不意に空っぽの隣の席に目をやる。
こんなに近いのに何故遠くなってしまうのか……。
「……違う」
周りの目を気にして天を遠ざけているのは自分の方だ。
「はぁっ……」
無造作に整えられた髪をグチャグチャと掻き、皇楽は重い足取りで教室を出て行った。