はちみつドロップス
「急にどうしたのっ?」
皇楽が学校を出てから数時間後。
朗楽のお迎えを済ませた足で行きつけのスーパーに向かった皇楽の目的は、
「……ほらっ」
メールで呼び出した天にぶっきらぼうに突き付けた小さな袋の中身にあった。
静かな公園の街灯の下。
ブランコの柵に座った皇楽から渡された袋を反射的に受け取り、そっと中を確認した天は、
「チーズケーキだ!」
昼休み直後の寂しげな笑顔が嘘のように、うれしそうな笑みを浮かべて声を弾ませた。
「……昼間、悪かった」
「えっ?」
柵に座っているせいでいつもより目線の低くなった皇楽を不思議そうに見つめる。
「……単純におまえが喜ぶと思ったから」
だからスコーンを渡したと、消え入りそうな声でポツポツと漏らし始める。
しかしその傍らでは、
「悪い、無神経で……って聞けよっ」
「美味しい! まだあったかいよ?」
しおらしく頭を下げる皇楽に構わず、袋の中から取り出したチーズケーキを天は幸せそうに頬張っている。