はちみつドロップス
……まただ。
せっかく仲直りしたはずなのにまた天から遠ざかってしまった。
追いかけることの出来なかった自分が恨めしくて、前髪をクシャクシャと荒く掻きむしった。
「……あんな顔させちゃダメでしょ。仮にも彼女なんだからっ」
あれから昼休みになっても戻らない天に、皇楽は悶々とするだけ。
教室の前に出て辺りを窺うようになっただけマシか……。
眉間にシワを寄せて振り返った親友に、嫌味っぽく声を掛けた慶斗は爽やかに作り笑顔を浮かべた。
「だから違うっ……」
気まずげに視線を逸らし、それでも往生際悪く否定し続ける皇楽に慶斗の表情が一変する。
「そうやって毎度毎度好きなヤツに目の前で全力で否定されてたら……あんな悲しそうな顔にもなるって話だろ」
「…………」
そこにいつもの慶斗は居ない。
ただ、黙り込んでしまった親友を呆れたような無表情で見つめている。
何も言わない皇楽に盛大な溜め息をつき、。
「想いが通じ合ってるから大丈夫なんて、おまえの独り善がりだろ。現に高宮の顔、不安だらけだったじゃん」
これだから数だけで中身の薄い交際しかしてないヤツは……。
なんて続けようとしたけど、皇楽の表情を見て思い留まった。
さすがにもう皇楽の口から否定の言葉は聞かれない。
まだ言うようだったら一発殴ってやろうと握った拳を慶斗がゆっくり解いた。