はちみつドロップス
「……俺ならさせないよ」
「っ……」
「天さんにそんな悲しそうな絶対顔させない」
「……涼希」
涼希の強い眼差しに思わず動けなくなってしまう。
それをじっと受け止める天と涼希の視線は重なり合ったままだ。
すぐに否定しない天に苛立ちを感じる。
でも天にそうさせたのは全部自分のせいだ。
後悔ばかりが込み上げて皇楽は悔しげに唇を噛み締めた。
天の眼中には自分しか居ないなんて、勘違いも甚だしい……。
掛ける言葉なんてもちろん見付からず、そのまま何も言わずに立ち去ろうと立ち上がる完全な負け犬。
そんな自分の視界の隅に、
「そうだね。……涼希は優しいよ」
こう言って微笑んだ天にが映って思わず視線を外した。
これ以上聞いても虚しくなるだけとわかってるのに、
「あんなだけど高原に悪気は無いんだ、多分。……だから高原悪く言わないで? わかってるのにわたしが勝手に嫉妬してただけだからさっ」
自分を庇う天の声に足が止まる。
困ったように笑ってみせる天に涼希は不満を隠すことなく顔に浮かべている。
「俺は納得出来ないよ」
「だって高原って押しに弱いじゃん? それに優しいから……椎菜のことも突き放せないんだよ」
半ば自分に言い聞かせるように呟いた天の瞳はやっぱり寂しげに見える。