はちみつドロップス
「ちょっと屋上の空気吸ってくるよ」
駆け上がっていく背中をずっと見つめ続けていた。
屋上のドアが閉まると同時に立ち上がった涼希はゆっくりと階段を降りていく。
「天さんってイイ女ッスよね。……男運激悪だけど」
「…………」
下で立ち尽くしていた情けない背中に、イヤミと悔しさ混じりに言葉をぶつける。
振り返った皇楽は思った通り眉間にシワを浮かべてこちらを見上げていた。
「アンタさ……ちゃんと天さんのこと見てんの? 天さんの笑顔、全然笑ってないんだけど」
「……うるさい」
そんなことは自分の方が百も承知だ。
それでもどうすることも出来ない自分にヤキモキしているのだから。
「何それ逆ギレ?」
「放っとけよ」
「アンタが天さんの彼氏じゃなかったら放ってるよ」
睨み付けるように皇楽を見下ろす涼希に負けじと睨み返す皇楽。
一度は引き返そうとした足を、天の気持ちに答えるべく一歩一歩進めていく。
「アンタに道譲りたくないけど好きな人が泣くのはもっと嫌だから」
こう言って階段を降りていく涼希と階段を上がっていく皇楽が擦れ違った。