はちみつドロップス
昼休みになり、涼希はいつもの定位置へとお弁当と椅子を引っ張っていく。
涼希の到着を待たずして既にお弁当の蓋を開け始めている雄楽の前に座り、相変わらず丁寧に作られた中身に目をやった。
「毎日マメだよな……高原先輩」
雄楽の兄である皇楽が作るお弁当に何気なく呟き、涼希は自分のお弁当箱をゆっくりと開けていく。
「いや……今日は」
「えっ?」
何やら言いたげに口ごもる雄楽に、訝しそうに眉を顰めたと同時に、
「雄楽くんっ」
少し息を切らした背の高い女の子が駆け寄って来た。
一つ年上の雄楽の彼女候補である高月 聖梨(たかつき ひじり)だった。
天よりも少し高い身長と涼やかな顔付きに反して、涼希にはにかんでみせた顔は柔らかく女の子らしい。
「お箸、入れるの忘れちゃった。ごめんねっ」
「……サンキュ」
目の前の涼希の視線が気になるのか、素っ気なく箸を受け取った雄楽。
そそくさと箸を取り出し、お弁当に手を付けようとする雄楽を、傍らに立つ聖梨がじっと見つめている。