はちみつドロップス

「……なに?」

「……美味しい?」


昨晩から下味を付けておいた唐揚げを口にしたところで、聖梨が雄楽に尋ねる。


それを聞いた瞬間、


「そ、そんなことわざわざ聞くなっ」


「気になって……」


顔を赤らめて荒っぽくまくし立てる雄楽に、聖梨がおずおずと口を噤んだ。



「……ごちそう様」


ずっと正面から二人のやりとりを見ていた涼希は、いただきますを言う前に思わずこう言ってしまった。



涼希の冷やかし混じりの一言に、雄楽は何やら言いたげに口をもごもごさせる。


「じゃ、じゃあわたし戻るね」



雄楽につられて頬を赤らめた聖梨が、足早に教室から出て行った。



「見せつけてくれるなぁ。……イヤミ?」


「ちげぇよっ!」



薄い笑いを浮かべて雄楽に呟いた涼希が、聖梨の立ち去った廊下に目を向ける。


何気なく目を向けたそちらで、偶然にも重なった視線。


通りがかりにこちらを見つめていた涼姫が、驚いたように視線を逸らした。


キリッとした彼女らしからぬ、動揺したような反応。
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