はちみつドロップス
「あ、あのっ」
「んっ?」
何やら歯切れの悪い呼び声に呼ばれ、涼希は放課後の廊下を歩く足を止めた。
振り向いた先には、凛とした顔を少し強ばらせた涼姫がじっと涼希を見上げていた。
「あっ……」
涼姫、と言いそうになって思わず口を噤む。
いくら同じ名前とは言え、馴れ馴れしく女の子を呼び捨てで呼べる程図々しくはない。
それに、
「あの、鳥居くんに聞きたいことがあるんだけど」
涼姫の方も自分をちゃんと名字で呼んでいる。
同じ名前のよしみなんて、涼姫は望んだりしていないだろう……。
「なに? 高瀬さん」
出来るだけ人当たりの良さげな笑顔を浮かべ、涼希は涼姫に問い掛ける。
「…………」
涼姫の強張った表情が更に堅くなる。
目を伏せて視線を外した涼姫に、涼希は一息置いてゆっくり口を開いた。
「雄楽のこと?」
涼希の言葉に一瞬で涼姫の顔付きがキツくなる。
怒らせてしまったのかと、すぐさま言葉を探す涼希に、
「……うん」
困ったように眉を顰めて小さく、でも確かに涼姫は頷いた。