はちみつドロップス
思いがけず可愛らしい反応を見せ、ちょっと拍子抜けした涼希はマジマジと彼女を見つめた。
眉の少し上で切りそろえられた前髪の下から見えるキリッとした瞳が、落ち着かなげに揺れている。
「高原くん、三年の高月先輩と付き合ってるのかな?」
ふっくらとした薄紅色の唇から零れた言葉に、涼希は思わずそっと息を飲んだ。
「……付き合って無いよっ」
精一杯自然な作り笑顔を涼姫に見せる。
ずっと不安げに揺れていた涼姫の瞳が、パッと嬉しそうに表情を変えた。
ただ、それは雄楽が部活を引退するまでの約束事でしかない。
両想いである真実の上に被せられた、仮初めの関係でしかない。
でもきっと、それを口にしてしまえば、
「……良かった」
涼やかな顔が、頬を染めた可愛らしいこの表情は……消えてしまうんだろう。
「ねぇ、高瀬さん」
「えっ?」
嬉しい余韻が残る顔を上げた涼姫に、
「俺で良かったら何でも聞いてよ」
涼希は饒舌に嘘を重ねた。