はちみつドロップス

「あっ、月先生こんにちは」



朗楽の声で鶏肉が原因の口喧嘩に勤しんでいた保護者二名も、慌てて後ろを振り返りペこりと会釈した。



「ウチも冷食と卵買いに来たんですよ」



母子家庭の高原家で皇楽が主婦代わりをしていることは保育園内でも有名な話。



加えて送り迎えに現れる雄楽や藍楽に、



「若いのにみんな偉いわね~」



なんて言いながら、先生方はとても高原兄妹に感心しているのである。



お互いの買い物カゴに入った冷食を見比べながら和やかに談笑が始まる。



お弁当のおかずって選ぶの大変ですよねぇ~。



なんて言葉に月先生の前では和やかに頷いていた皇楽の動きが、



「お姉ちゃーん。卵Lパックしか無かった」



一瞬で凍り付いたように静止して固まった。



何故なら、



「あらそう。ならそれでいいわ」



月先生をお姉ちゃんと呼ぶ声の主が、



「んっ? あっ、高原!」


つい一時間前まで自分の隣に座っていた鬱陶しいハニーブラウンだったからだ。




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