はちみつドロップス

「天さんが高原先輩を好きってわかってたし、高原先輩が天さんを好きなのも……それでも好きだった」



涼姫をじっと見つめる涼希の瞳がゆらゆら揺れている。



天を好きで居た時間。


好きで居られるだけで満たされたのは、まだ自分にも小さな可能性があったから。



そして失恋して、好きで居ることを諦めた後の心の空白。



好きでいることを諦めるのも、叶わない想いを抱き続けるのも辛かった。



「だから、涼姫の話聞いて自分の失恋と重なって……言えなかったことがある」



「……なに?」



強張った涼希の顔に精一杯笑顔を作って、涼姫は柔らかい声で問い掛ける。


その優しさが、今から涼姫を傷つけてしまう自分の胸をぐっと締め付けた。



「雄楽と高月先輩は両想いだよ。部活に専念する為に保留にしてるだけ」



「……えっ」



自分の為に浮かべてくれた涼姫の笑顔が消える。


あの日、自分がその場しのぎ言わなかったら……涼姫はとっくに雄楽を諦め切れていたかもしれない。

< 193 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop