はちみつドロップス
「ごめんっ」
低く、くぐもった声で深く頭を下げた涼希をただ、ぼんやりと見下ろす瞳にわっと涙が溜まる。
「言い訳って思われても良い。俺、涼姫を傷つけたくなかった」
足元に落ちた雫が、俯いて見えない涼姫の涙を涼希に知らせた。
こんな風に傷つけたくなかった……。
そう思って隠したいた真実が招いた結末。
どんなに後悔しても、取り消せない。
涼希は悔しげに下唇を噛み締めた。
「……涼希」
初めて呼ばれた声は震えていて、堪らずに顔を上げれば、ふわりと甘い涼姫の髪の香りが全身に絡んだ。
「ごめんね……わたし、気付いてたよ。……高原くんと高月先輩のこと」
涼希の体に飛び付いた涼姫が、小さな声で紡いでいく言葉。
小刻みに震える背中を、涼希は遠慮がちにそっと撫でる。
「確信が無かったから……涼希に尋ねて、はっきりそうだって言われたら諦めようと思ってたの」
しかし、涼希の口から聞かされたのは自分が思い描いていたような言葉ではなかった。