はちみつドロップス
「だから言ったじゃない……。皇兄は天さんにベタ惚れなんだから……」
「だってぇ……。ルックス良し、頭も運動神経も良いのに手先も器用なんて……最高なんだもんっ」
こう言って椎菜は、ふぅっと小さく溜め息をついてみせる。
その向かいに座っていた藍楽は、失恋でヘコむぶりっ子娘に慰めの言葉の一つも掛けてやる気にならず見て見ぬふり。
「はぁ……。高原先輩以上に椎菜の王子様に相応しい人なんか現れるのかなぁ……」
藍楽をじっと上目に見つめる椎菜に、あからさまに表情を歪めた。
「……見つからなかったら、椎菜やっぱり高原先輩に」
「居るじゃない。ぴったりの人」
さっさと話題を切り替えねば、また皇楽と天の間にちょっかいを出さないとも言い切れない。
とっさに出した一言も、決して何の根拠も無しに言ったワケではない。
「城戸くんが居るじゃない」
「えーっ! 修護(しゅうご)のことっ?」
修護の名前が出るなり、椎菜は気に入らないと言わんばかりに唇を尖らせた。