はちみつドロップス

「好きなモノは好きなんだから仕方ないでしょっ! 放っといてよっ」



「そうはいかない。椎菜を放っとくとまた人様のモノに手をつけかねないからな」


それに、可菜子さんに怒られる。



と、昔から殆ど家に居ることのない母親の名前を出されたから椎菜の苛立ちは更に増す。



父も母も、昔から仕事だ何だと言って家に居ることが少なかった。



その癖、こうしてしっかり者の幼なじみをちゃっかりと自分のお目付役にしているところがいけ好かない。



「修護もママも関係無いでしょっ! 椎菜の王子様は、高原先輩なのっ!」



声を荒げた椎菜はキッと傍らの修護を睨み付け、そのまま机に顔を伏せてしまった。



もう、こうなってしまっては椎菜は何を言っても聞く耳を持たない。



それを長年の付き合いで一番理解している幼なじみは、何も言わずに踵を返した。



教室の入り口に避難し、二人のやり取りをずっと見ていた藍楽との擦れ違い際、



「高原さん」


「は、はいっ」



修護の鉄仮面にゆっくりと見下ろされ、思わず恐縮してしまった。
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