はちみつドロップス
それ故に、


「おまえさ、半年くらい彼女いないよな」



親友の慶斗(けいと)からの爽やかな問いかけに、



「……うるせぇ。五ヶ月と二十一日だ」



皇楽は眉間に極太なシワを寄せてこう返した。



彼女が居ないは皇楽にとってのタブー。


半年前(正確には五ヶ月と二十一日前)の彼女を含め、歴代の彼女たちが口を揃えて言うセリフ。



「皇楽くん……なんだか忙しくて会えないみたいだから」



それもそのはず。


高原家の主婦の一週間は月、水、金は朗楽の保育園のお迎え。


火、木、土はカフェ バタフライでのバイト。


朝晩の食事の用意に片付け。


お弁当作りに洗濯物。


時折アイロンがけやスーパーへの買い出しなども挟みながら、およそはこんな感じで毎日を過ごしている。



そして主婦な実態を隠している為にこの平日の忙しさを、彼女たちは浮気でもしてんじゃないかって疑いを持たれてしまう。



そして皇楽の気持ちを知る由も無く離れていってしまうのだ。



「ホントおまえは完全な主婦だな」



バイトと家事育児に追われる皇楽の高校生活は、男子高生らしさからはかけ離れていく一方だった……。
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