はちみつドロップス
出来上がったチーズケーキを紙袋に入れ、修護が向かった場所。
椎菜の家との境目。
あの頃、背伸びをしてやっと見えた垣根の向こう側も、今ではあっさりと飛び越えてしまえそうな程低くなっていた。
あの頃と変わらない風景。
「…………」
あの頃と変わらない庭に、あの頃と同じ顔をした椎菜が立っている。
「修護……」
どんなに男子にぶりっこしていても、女子を皮肉げに嘲笑っても、その表情の中にはいつも寂しさが滲んでいた。
椎菜の根本は何も変わっていない。
寂しがり屋で気の弱いただの女の子。
椎菜の揺れる瞳に自分が映っている。
そこへ何も言わずに差し出したのは、ほのかに甘い香りを漂わせた焼きたてのチーズケーキだった。
「……修護」
「いつでも、椎菜を守るのは俺だと思ってきた」
修護の表情はいつもと変わらない。
淡々とした口調で紡がれていく言葉を、椎菜は黙って聞いていた。
「でも実際、守る場面なんて殆ど無い。むしろ、他人の恋路を邪魔してるワケだし……守る必要なんて無いのかもしれない」
「そうだよ。必要無い」
椎菜の家との境目。
あの頃、背伸びをしてやっと見えた垣根の向こう側も、今ではあっさりと飛び越えてしまえそうな程低くなっていた。
あの頃と変わらない風景。
「…………」
あの頃と変わらない庭に、あの頃と同じ顔をした椎菜が立っている。
「修護……」
どんなに男子にぶりっこしていても、女子を皮肉げに嘲笑っても、その表情の中にはいつも寂しさが滲んでいた。
椎菜の根本は何も変わっていない。
寂しがり屋で気の弱いただの女の子。
椎菜の揺れる瞳に自分が映っている。
そこへ何も言わずに差し出したのは、ほのかに甘い香りを漂わせた焼きたてのチーズケーキだった。
「……修護」
「いつでも、椎菜を守るのは俺だと思ってきた」
修護の表情はいつもと変わらない。
淡々とした口調で紡がれていく言葉を、椎菜は黙って聞いていた。
「でも実際、守る場面なんて殆ど無い。むしろ、他人の恋路を邪魔してるワケだし……守る必要なんて無いのかもしれない」
「そうだよ。必要無い」