はちみつドロップス
両親の離婚を機に皇楽自身には諦めたモノがたくさんあった。
小学校の高学年から続けてきたサッカーを続けるという選択肢。
放課後の自由。
恋愛。
周りの高校生たちが当たり前に謳歌してるモノを楽しめない苛立ちは、がむしゃらに主婦業をこなした一年目よりも慣れ始めた二年目に現れたのだった。
初めは定時に帰宅していた母親の残業が増え、当時は年少組だった朗楽も寂しさからか午睡中におねしょをするようになってしまった。
「皇にぃ、ごめんなさい……」
しょぼくれて謝る朗楽の頭を撫でながら、仕方ないと自分に言い聞かせるしか苛立ちを抑える方法がなかった。
保育園とスーパーに寄るだけの放課後に嫌気がさしてたまらない。
だから逃げ道にバイトを始めた。
そして店に数回足を運んできた小柄で可愛らしい女の子に、
「良かったら付き合ってください」
告白されて付き合うことになった。
自分で言うのも憚られるが、どうせ見た目がキッカケなのはわかっている。
それでも構わなかった。
高校生らしさを味わえるのなら。