はちみつドロップス

「八つ当たりだ。悪いけど紛れも無く……」


潔く頭を下げた兄に、あの頃の皇楽に傷つけられた聖梨を思って怒りは湧いたものの怒ることは出来なかった。


自分が打倒兄貴にサッカーに打ち込む影で犠牲になったもの。


それを思うと雄楽の胸はチクチクと痛んだ。


そして、


「でも、兄貴が聖梨に逢ったのがあの頃で良かったのかも」


「……なんでだよ」


「だって兄貴の主婦姿見ても平気だったし、アイツも」


手元のコントローラーを見つめながらモゴモゴと口ごもる。


タイミングが違えば皇楽が聖梨を気に入ることもあったのかもしれない。


それを口にすると女々しくなりそうで雄楽はそのまま押し黙ってしまった。


「心配しなくてもそれはねぇし」


「はぁ? なんで? 天さんより聖梨のが断絶女らしいのに」


惚気てんのかと思わずツッコんでやりたいのを皇楽はグッと飲み込む。


そんな自分の言動に気付かず怪訝そうに自分を見つめる雄楽に、


「もったいないから教えねぇ」


ポイッとコントローラーを投げ渡した皇楽が、そのまま立ち上がってリビングを出て行った。


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