はちみつドロップス

泳いだ天の視線が一瞬見つめた先には確かに、天から視線を外した皇楽が映っていた。



「はぁっ? んなわけないだろ。気持ち悪い」


「……でもさ」



鼻で笑う皇楽に慶斗は出しかけた言葉を飲み込んで思わず口ごもる。



自分の勝手な予想は口にしても良いものなのか……。



「まぁ、今はそういうことにしとくわ」



勝手な予想はあくまで勝手な予想。



振り払って打ち消した慶斗は何事も無かったように爽やかに笑ってみせた。



「それより……あの巨女が花井にバラさないかが問題だ」



「確かに。あの二人仲良いから」



皇楽の本当に危惧するところは皇楽のお姫様(候補)が天と仲が良いこと。


天自身にバレたことは痛くも痒くもないが、天経由で絵那にバレてしまっては一貫の終わりだ。



「でもさ、皇楽が花井さんに気があるって高宮は知らないだろ? だったら……」


大丈夫なんじゃない?



こう続けようとした慶斗は思わず言葉を飲み込んだ。



「……へぇ。高原って絵那が好きなんだ?」



いつの間にか更衣室の扉には小さな隙間が出来ていて、



「ゲッ……」



ニヤニヤと笑う天がそこからゆっくりと姿を現した。



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